不動産にかかる税金一覧と節税ポイント④【相続時】

不動産を保有することによってかかる税金の種類を取得時、保有期間中、売却時、相続時別といったイベントごとに大まかに覚えておきましょう。また、これらの税額を抑える節税ポイントについて理解しましょう。今回は「不動産物件の相続発生時」の税金について確認していきましょう。相続税は専門的な事項が多く非常に複雑なので一般的なケースを想定し最低限知っておいていただきたいポイントだけを説明します。

1.不動産を相続した時にかかる税金

① 相続税の概要
② 不動産に係る相続税
③ 法人化の場合の相続税
④ 不動産投資家の相続税対策

① 相続税の概要

相続税対策として不動産が有効だということをご存知の方は多いかと思いますが、まずは、そもそも相続税がどのように計算されているかざっくりと理解していただきたいと思います。

相続税額の計算は、基本的に以下の式で算定されます。(概要理解のため簡略化した式)

  • 相続税額 = (相続財産額 - 基礎控除額) × 税率

上記の式の大事な部分として「基礎控除額」があります。最低でも3000万円控除される仕組みとなっており、さらに、法定相続人ひとりにつき600万円に増加します。
例えば、相続人が3人(妻1人、子供2人)の場合は、基礎控除額だけで4800万円となるので、遺産の総額次第では、実は相続税を払わなくてよかったなんていうこともあるかと思います。

また、上記の例のように妻(配偶者)が相続人になる場合、配偶者には軽減措置があり、配偶者分の相続財産が1億6000万円以下の場合は相続税はかかりません。(子供には軽減措置はなく相続税がかかります。また、その後、配偶者が亡くなった時のいわゆる2次相続の際には子供に再度相続税がかかります。しかし、2次相続の際にもあらためて基礎控除額を使えます。)

なお、遺産の相続は資産だけではなく負債も相続人に引き継がれますので、相続税を計算する際も、例えば、不動産投資のための借入金が相続時に残っている場合は「相続財産額」から控除されます。

相続税の税率は、所得税と同じく累進税率の仕組みを採用していて、課税相続財産額に応じて10%~55%です。
例えば、1億円の現金を子供1人に相続する場合の税金額は1220万円となります。これが2億円の現金になると4860万円となります。
遺産は単純に2倍ですが、累進税率の影響で税金の方は4倍近く増えてしまい、最終的に手元に残るキャッシュが思った以上に少ないと感じられると思います。

以上を踏まえると、相続税を節税するためには、出来るだけ低い税率となるように相続財産額を低く抑えることが大切になってきます。

② 不動産に係る相続税

相続税を納めた方の大半が不動産を保有していたことが公表されており、先祖代々古くから所有する土地の地主や大家さん、不動産投資によって物件を保有している不動産オーナーにとって相続税は大きなテーマとなります。
ここでは、不動産を保有している場合の相続税の計算方法についてポイントを説明し、なぜ、不動産が相続税対策として効果的と言われるのかを理解していただきたいと思います。

不動産の評価の基本 ステップ1

不動産物件の相続税評価は、土地と建物に分解して実施します。土地については基本的には国税庁から公表されている路線価×面積で算出されます。また、建物は、市町村から送られてくる固定資産税評価額を相続税でも使用します。

  • 土地:路線価 × 地積
  • 建物:固定資産税評価額

路線価の評価額は、公示価格の8割と決まっていて、物件・地域により差はありますが実際の取引価格と比べると60%~80%程度と言われているので、現金で保有しているよりも相続税の支払いが抑えられることになります。

賃貸不動産の評価 ステップ2

不動産物件が賃貸事業に用いられている場合は、もう一段の評価を引き下げる制度が用意されています。詳細は省きますが、土地および建物に対する借地権・借家権と呼ばれる部分の価値を控除することが出来ます。

  • 賃貸物件の土地評価額:土地評価額-(土地評価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)
  • 賃貸物件の建物評価額:建物評価額-(建物評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借地権割合は土地の用途や地域によって30%~90%と定められており、商業地や住宅街の一等地などは高くなる傾向があります。借家権割合の方は現在30%で一律固定されています。このように賃貸事業に利用することによりさらに相続税の支払いを抑えることが可能となります。

不動産の評価の特例 ステップ3

さらに不動産の相続には「小規模宅地等の減額特例」という制度が用意されています。親と同居しているマイホームなどを相続した場合の負担を減らすこと等を目的とした軽減措置になりますが、賃貸事業に利用されている土地に対しても制度を利用することが出来ます。

  • 賃貸物件の土地評価額減額の特例:50%の減額(最大200㎡まで

この特例を適用するためには、賃貸事業が相続発生時から遡って3年以上経過している必要がありますので、相続税対策として取得する場合には出来るだけ早く開始することが必要になります。
また、このほかにも賃貸業以外のビジネスで利用している土地や被相続人と同居している自宅の土地などにも、小規模宅地等の特例を適用することが認められています。併用するための条件や制約等もありますので、最大限の効果が得られるようにシミュレーションが必要です。

  • 相続税額の比較

先ほどの事例と比較してみましょう。
現金2億円ではなく、300㎡の土地1億円と建物1億円の賃貸物件を購入して、子供1人に相続した場合、相続税額は1048万円となります。現金そのままで相続する場合と比較して相続税3812万円を削減することが出来ました。

実際に不動産物件を新たに取得する場合は、手数料のコスト、家賃収入のリスク、土地価格の下落リスク等がありますので、物件の収益性や価値を見極める必要があるのは相続対策目的に関わらず同様ですが、上記の例にもとづくと、理論上は約3800万円の損失までは吸収できることになります。

<事例の計算>
土地分:10,000×0.7-(10,000×0.7×0.6×0.3×100%)=5,740万円
建物分:10,000×0.8-(10,000×0.8×0.3×100%)=5,600万円
小規模宅地の特例の適用:5,740-(5,740×200㎡/300㎡×50%)=3,827万円
相続税額:(5,600+3,827-3,600)×30%-700=1,048万円

※計算前提:土地の評価は購入額の0.7とし、建物は0.8としました。また借地権割合は0.6で、賃貸割合は100%としました。
※なお、土地5000万円と建物5000万円の物件の場合の相続税は117万円となり、現金1億円の場合と比較して1103万円の削減となります。

③ 法人化した場合の相続税

不動産を所有する法人(株式会社や合同会社)の設立目的は、不動産投資の規模拡大や法人で節税しキャッシュ・フローを最大化、あるいは、上述した相続税対策として不動産投資を始めた際に不動産管理会社を設立した、など様々な理由があるかと思います。
このような不動産管理会社のオーナーである株主が亡くなった場合の相続税の計算についてポイントを説明します。

相続財産は株式

不動産管理会社の株主が亡くなった場合の相続人の相続財産は「株式となります。つまり、会社そのものを遺産として相続し、株主としての地位が引き継がれます。不動産の所有者は相続発生の前後で変わらず、会社のままであることに留意してください。

株式の評価方法

基本的な非上場株式の評価方法は、A.純資産価額方式B.類似業種比準価額方式、のいずれか、またはA.とB.を両方使って割合を組み合わせて評価を行います。

それぞれの具体的な評価方法は複雑なので簡単に説明すると、A.の純資産価額方式は、単純に不動産評価額=純資産価額とイメージしていただければと思います。①で説明したとおり、会社に借入金がある場合は残高を控除して純資産価額を計算します。
B.の類似業種比準価額方式は、上場企業の株価を参照して相続する株式の評価額を算定します。不動産管理会社の場合は不動産業として上場する企業を類似企業として選定して計算することになります。

会社の規模や株主構成などにより選択できる評価方法が変わってきますが、ここではB.の類似業種比準価額方式を採用することにより相続財産評価額を引き下げることができるケースが多いため、できるだけB.を使えるように条件を整えていくことが重要であるということを理解しておきましょう。

相続税対策の法人化はできるだけ早

不動産管理会社の「株式」が相続財産の場合でも、会社が所有する不動産そのものの評価方法は基本的に上記②と同じですのでの恩恵を受けることは可能です。
ただし、相続発生から3年以内に取得した不動産は、路線価・固定資産税評価額ではなく、通常の取引価格で評価しなければなりません。

特にご高齢の方が相続税対策として法人スキームによる不動産の取得を考えている場合はこの点に留意してください。せっかく相続税を減らせると思っていたのに3年経過する前に相続が発生してしまい効果があまり得られなかった、なんていうこともあるかもしれません。

④ 不動産投資家の相続税対策

不動産を相続する場合は遺産分割をどうするのか、誰が不動産を相続するのか、納税資金の準備(現金化)など、税金以外の面でも検討することはたくさんありますが、ここでは、不動産オーナー・大家さんの相続税の節税対策にフォーカスして重要なポイントを説明していきます。
相続税は非常に個別性が強くひとりひとりベストな解決策が異なりますので、実際には税理士に相談しながら取り組んでいってください。

最重要事項! 相続税対策を始めるタイミング

以下に具体的な対策をいくつか紹介しますが、何よりも一番重要なことは、出来るだけ早く相続税対策を検討して実行し始めることです。これが全てと言っても過言ではありません。相続税対策のほとんどは生前にしかできませんし、効果の大きいものだとある程度の年数が必要になってきます。また、認知症になった場合にも同様で、現状の法律では認知症の方は生前でもほとんどの相続税対策を実施することが出来なくなります。

上記の事例で説明したとおり、相続税対策をしたか否かで簡単に数千万円の差が生まれてしまいます。
なかなか相談する機会やきっかけがないでしょうし、相続税対策を考えないまま相続が発生し、相続税の申告の時になって初めて会計事務所にお願いするケースがほとんどかと思いますが、このタイミングでやれることは限られてしまいます。
基礎控除額を超える財産をお持ちの方やご家族の方は、出来るだけ早く行政の相談窓口や税理士などの専門家にご相談されることを強くおススメします。

相続税の節税対策 5選

今まで説明してきたとおり、不動産で保有すること自体がとても有効な相続税対策となりますので、現金や株式などで遺産が一定程度を超える場合は、まず物件取得を検討することがスタートラインになります。相続税の節税目的で物件を取得する場合は、収益性はもちろんのこと、相続税の財産評価の際に有利になる物件を選定することが重要です。不動産業者に目的を伝えて適切な物件を紹介してもらえるようにしてください。できれば物件取得前に税理士に相談して税額シミュレーションを出してもらうのがよいでしょう。

物件を保有する不動産投資家・大家さんが、さらに相続税を節税するための代表的な対策5選を紹介します。

  1. 相続時精算課税制度の活用・・・賃貸物件を生前に子や孫に贈与することにより、賃貸事業から得られる収入を相続発生前に子や孫の所得に移転することが可能となる。収益性の高い物件の場合に有効な手段。相続財産を低下できるとともに納税資金の準備も早期にできる。
  2. 法人スキームによる生前贈与・・・オーナー個人で所有する物件を法人に移転し、子供・孫を法人の株主とするスキーム。No.①の法人versionであり、より効果の高い手段。生前に不動産の所有権および不動産収入を相続人に移転させ、不動産を相続財産の対象外とできる。
  3. 法人からの役員報酬・・・配偶者、子供・孫に不動産管理法人の役員に就任してもらい、賃貸から得られる収入を役員報酬として支払う。実質的な経営を相続人が行い報酬を払うことで相続発生前に資産を配分することができる。
  4. 法人から退職金支給・・・法人から被相続人が死亡した時に役員退職金を支給し、相続人に非課税の相続財産を配分する。税法上、法定相続人ひとりにつき500万円の非課税枠が認められている。
  5. 生命保険による遺産圧縮・・・死亡により配偶者、子などが受け取った保険金は、税法上、法定相続人ひとりにつき500万円の非課税枠が認められている。

POINT!

  • 相続税対策で何よりも重要なことは、生前&認知症になる前に始めること!
  • 相続税は基礎控除額を超えなければそもそも納税不要!
  • 不動産を遺産にすると3つの軽減措置があり、現金の場合に比べて何倍も税金が削減される!